
はじめに|なぜ「学生理解」が今、採用成功の分かれ道になるのか
2025年の新卒採用市場は、コロナ禍明け以降の価値観変化、AI・DXの急速な浸透、そして経済不安などの影響で、学生の志向や行動が大きく変化しています。
かつての「安定志向 vs 成長志向」といった単純な構図ではなく、“自分らしく働ける安心感”を求める傾向がより顕著になりました。
「学生が何を求め、どんな基準で企業を選んでいるのか?」
この理解が採用成功を左右する時代に突入しています。
1. |「安定」と「安心」を重視する学生が急増中
近年の学生の特徴として最も目立つのは、「安定」「安心」を重視する志向の高まりです。
物価上昇や雇用不安を背景に、学生の関心は「この会社で安心して生活できるか」へシフトしています。
物価上昇や雇用環境の流動化を背景に、学生はより現実的で具体的な安心感を求めているのです。
<主な傾向>
・給与や昇給制度、福利厚生を細かくチェックする学生が増加
・「経営基盤が安定しているか」「将来も潰れないか」といった質問が多い
・口コミサイトやSNSを通じて、実際の社員の声をリサーチする動きが活発化
💡 ポイント:採用広報は「情緒的な安心」から「具体的な安心」へシフトせよ。
「安心できる会社」であることを具体的な数値や制度で裏付けましょう。
特に、「安定して長く働ける仕組み」や「明確な昇給・評価ルール」などを打ち出すことで、信頼感と説得力が飛躍的に高まります。
2. 「働き方の柔軟さ」と「人間関係のリアルさ」を求める
リモートワークやフレックス勤務が一般化するなかで、学生は「働きやすさ」を強く意識しています。
しかし、その焦点は単なる“制度の有無”ではなく、「その制度が現場で機能しているか」「どんな人間関係の中で働けるか」という心理的安全性に移っています。
特に若年層の学生は、職場で「孤立する不安」を強く感じており、「相談のしやすさ」を重視する傾向があります。
<学生が注目しているポイント>
・リモートワークや出社頻度など、働き方のリアルな実態
・上司や先輩との距離感、人間関係の雰囲気
・「相談しやすい職場」「メンター制度」などの支援体制
💡 ポイント:「職場の人の顔が見える」コンテンツの量と質を高めよう。
採用ページや説明会では、現場社員による社員インタビュー動画やチーム紹介、日常を覗けるSNS発信など、職場のリアルな温度感と人間関係の透明性を伝えるコンテンツを充実させることが効果的です。
3. |「キャリアの流動化」— 最初の会社を“ゴール”と考えない
今の学生の多くは、「一社で一生を終える」というキャリア観を持っていません。
むしろ、最初の会社を「自分の市場価値を高めるためのステップ」と捉え、スキルアップとキャリアの自己決定を重視する傾向があります。
これは、SNSで多様な働き方や転職成功例を目にしていること、副業・フリーランスが身近な選択肢になっていることが背景にあります。
<背景にある変化>
・自分の意思でキャリアを選び、構築していくという教育環境の変化。
・「入社後にどんなスキルが身につき、それが他社でも通用するか」という、汎用性のある成長に関心があります。
・「3年後、5年後に自分がどうなっていたいか」という具体的な目標を、会社選びの段階で確認しようとします。
このため、「入社後にどんな成長ができるのか」「キャリアの見通しが描けるか」が企業選びの重要基準となっています。
💡 ポイント:会社紹介より「あなたの成長ストーリー」を提示する。
単に「良い会社」であることを伝えるのではなく、「3年後にどう成長できるか」「どんなスキルが、どんなプロジェクトを通じて身につくか」を具体的に提示しましょう。
キャリアパスの事例や、社内での異動・挑戦の制度を分かりやすく示すことで、共感が得られます。
4.|「早期化」と「デジタル就活」の波がもたらす「本音の見えづらさ」

最近では、大学2年生の冬から就職活動を始める学生がさらに増加し、就活の早期化が加速しています。
さらに、生成AIを活用してエントリーシートの作成や企業研究を行う学生も急増。
就活情報の取得やアウトプットが高速化・効率化している一方で、企業側からは学生の“本音”や“個性”が見えづらくなるという新たな課題が生じています。
💡 ポイント:オンライン時代こそ「人の温度感」で差をつける。
オンライン選考が当たり前になった今こそ、「誠実で丁寧な対応」が採用ブランドを形作ります。
面接や説明会での個別の丁寧なフィードバックや、迅速かつ温かみのあるコミュニケーションは、企業への信頼感を醸成し、学生に「選ばれた」という実感を強く与えます。
5.|「企業選びの軸」は“理念”より“リアル”
以前は「企業理念」「社会貢献性」などが志望動機の主流でしたが、現在は「やりたい仕事ができるか」「職場の雰囲気が自分に合うか」といった“リアルな視点”が重視されています。
学生は、企業が掲げる理想と現実のギャップを最も懸念しています。
<よくある学生の本音>
・「理念は立派でも、実際の現場がブラックなら意味がない」
・「先輩の働き方や定着率が一番信用できる」
・「成長したいけど、無理な働き方はしたくない」
💡 ポイント:企業文化と働き方を「見える化」することがカギ。
理念やビジョンを語るだけでなく、実際の働き方や社風を“見える化”することが重要です。
採用サイトで現場社員の1日のスケジュール、チームミーティング風景、残業時間の平均値などを公開し、嘘のないリアルな姿を伝えることが、学生の信頼獲得につながります。
まとめ|学生理解が“採用ブランド”を変える
学生の価値観は、この数年で確実に多様化・成熟化しています。
彼らが求めているのは「かっこいい会社」よりも、「自分を大切にしてくれる会社」です。
安定も成長も、安心も挑戦も、すべてを“バランス”の中で追求する時代に突入しています。
採用成功のカギは、「学生が共感できるリアル」を発信できるかどうか。
まず、貴社の採用広報で「働く人の声」と「成長の見える情報」を増やし、学生の「安心」と「自己決定」へのニーズに応えることから始めてみましょう。


