
令和7年11月の「熊本県内経済情勢報告」(九州財務局)が発表されました。
レポートによると、熊本県の景気は「物価上昇の影響がみられるものの、緩やかに回復している」という判断を維持しています。
半導体関連の大型投資が県経済を力強く牽引する一方で、暮らしに直結する物価高騰の影響も無視できない状況です。
最新の経済動向を、企業活動と生活の視点から読み解きます。
📊 経済全体の動向|回復の牽引役と重し
熊本県内の景気は、前回報告(7月)から判断を据え置き、「緩やかな回復」基調にあります。
【明るい要素】
・半導体関連投資:世界的な半導体企業の進出と集積は、関連サプライチェーン全体に波及し、依然として高い水準の案件が続いています。
・設備投資:半導体、脱炭素(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資、さらには物流インフラの整備を背景に、高水準の計画が続き、2025年度の県内総生産(名目)は過去最高水準が予測されています。
【懸念される要素(リスク)】
・物価高騰:エネルギーや食料品を中心とした消費者物価の上昇が、家計の購買力を圧迫し、個人消費の足を引っ張るリスクとして認識されています。
・人手不足の深刻化:雇用情勢の持ち直しとともに、有効求人倍率が高水準で推移しており、人手不足が中小企業の生産能力やサービス提供能力を制約する状況が指摘されています。
🛍️ 個人消費と雇用|回復の「質」に着目
個人消費:耐久財は好調、生活必需品は慎重に
個人消費は全体として「緩やかに回復」していますが、中身を見ると二極化の傾向が見られます。
・持ち直し:自動車や家電などの耐久財、外食や旅行などのサービス消費は回復傾向にあります。
・慎重化:日用品や食料品といった生活必需品では、価格高騰が家計を圧迫し、購入数量を抑える動きも指摘されています。
百貨店・スーパーやコンビニの売上は前年同月比でプラスが続いていますが、値上げによる影響も大きく、消費者は価格に敏感になっていると言えます。
雇用・所得:賃上げは継続も、企業の人材確保は喫緊の課題
雇用情勢は「持ち直している」と判断され、失業率は低位で推移し、雇用者数も増加傾向にあります。
・賃上げの動き:所得面でも賃上げの動きが継続しています。
・人手不足:しかし、前述の通り、有効求人倍率は依然として高水準であり、全業種で人手不足感は非常に強い状況です。
これは、企業が事業を拡大・継続する上での大きな制約となっています。
⚙️ 生産活動|半導体関連が下支え
生産活動は「一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している」との評価です。
・牽引役:輸送用機械や一般機械に持ち直しが見られ、特に半導体関連およびそのサプライチェーンに関連する分野は高水準の生産活動が続いています。
熊本経済の堅調さを保つ中心的なエンジンです。
💡 今後の見通しと注目すべきリスク
先行きについては、海外経済の減速、資源価格・物価の動向、そして県内の人手不足の深刻化が主な下振れリスクとして意識されています。
一方で、半導体関連投資や公共工事などが県経済を下支えする構図は当面続くものとみられています。
私たち個人や企業にとって、この「緩やかな回復」の波をしっかりと捉えるためには、物価高騰への対応策や、事業成長の鍵となる「人材の確保・育成」がより一層重要になってくると言えるでしょう。
【参考資料】
本記事の情報は、主に以下の公表資料に基づいています。
具体的な数値や詳細な指標は、各サイトにてご確認ください。
・九州財務局「熊本県内経済情勢報告(令和7年11月)」
・熊本県「熊本県の経済情勢(月刊号)」


