年末調整とは?確定申告との違いは?
「年末調整」は毎年、バックオフィス業務の一大イベントです。
年末調整は納税という観点から必要な手続きで、従業員にも様々な書類提出を求めることになります。
「年末調整」とは、端的にいうと「所得税の過不足を精算する手続き」のことをいいます。
会社員の人は、所得税や住民税を給与からの天引きで納税していますが、実はその金額は概算で計算されていて、正しい数字ではありません。
そのためどこかで調整する必要がありますが、それが年末調整というわけです。
税金を多く払っていた場合は還付(返金)され、不足している場合は徴収されます。
会社員以外の人は、会社で年末調整を行えないため自分で行うことになります。
それが「確定申告」です。
ちなみに会社員でも年末調整をしない人は自分で確定申告をしなければなりません。
そう考えると、「年末調整」はとてもありがたい制度です。
また、年末調整は「節税」という意味でも効果的です。
所得税には、「社会保険料控除」や「医療費控除」などさまざまな控除制度が用意されています。
このうち、年末調整では「扶養控除」「配偶者控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛け金控除」「障害者控除」「寡婦控除」「勤労学生控除」「住宅借入金等特別控除(2年目以降)」などについて申告することが可能です。
それ以外の控除については確定申告をしなければ反映されません。
しかしながら、多くの人が利用している扶養控除や保険料控除、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)などを、会社で手続きしてくれるというのは非常に便利です。
なぜ、年末調整するの?
説明した通り、正確な所得税額と、概算で給与天引きしていた所得税額との差額を調整するのが「年末調整」です。
年末調整で完結できる「控除」は?
年末調整で完結できる控除を一覧で挙げておきます。
勤務先で把握している控除
- 基礎控除
- 社会保険料控除
「扶養控除等申告書」を提出することで完結する控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
「保険料控除申告書」と「各種控除証明書」を提出することで完結する控除
- 配偶者特別控除
- 小規模企業共済等掛金控除※
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
※小規模企業共済等掛金控除は、iDeCo(個人型確定拠出年金)で払い込んだ掛金全額を指します
「住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅ローンの年末残高証明書」の提出が必要な控除
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)※
※2年目以降から。1年目は確定申告する必要があります
■年末調整のメリットは、コストと申告手続きなど税務作業の軽減
年末調整とは、給与の支払いを受ける人の1人ひとりについて、毎月の給料等から源泉徴収された所得税を、1年間の給料総額が確定する年末にその納めるべき正しい税額を計算して、
- 給与計算時に差し引いた所得税が多い ⇒ その差額を還付
- 給与計算時に差し引いた所得税が少ない ⇒ その差額を徴収
する制度です。
国側から見た場合の年末調整のメリットは何といっても徴税コストを軽減させることですし、納税者側からみたら煩雑な税務作業の負担が軽減することがあげられます。
逆にデメリットとしては、この制度があることで、日本の財政問題とか一般会計とか特別会計といったことに知らず知らずのうちに無関心にならされている土壌の要因になっていることは否定できません。
一方、納税者側からみれば、年末調整があることで税務作業を軽減できていることはメリットなのですが、「勤務先が自動的に行ってくれている」ことにより「税金の計算方法を知る機会が減ってしまう」という状態になってしまっているのはデメリットといえます。したがって、
を年末調整で勤務先に提出する場合には、税務署に確定申告書を提出するのと同じ意識を持つことが重要です。
例えば子どもがたくさんいて稼ぎは夫の収入だけという家庭の方が、夫婦共働きで子どもがいない家庭よりも生活が大変なことは想像できるでしょう。
■年末調整のメリットを知らず、必要事項を記載せず提出すると…
税務上、就学していて稼ぎを得ることができない子どもに代表されるように
- 同一生計(生計の基盤が納税者と同じであること)
- 合計所得金額が38万円以下
- 年齢16歳以上
- 6親等内の血族、3親等内の姻族
のことを「扶養親族」といいます。扶養親族が多ければ多いほど生活が大変ということが税務上考慮されるので扶養控除という規定があります。
この扶養控除に該当する扶養親族をカウントするデータが「扶養控除等(異動)申告書」なのですが、「何だかわからないけど、住所と名前と生年月日書いて」提出してしまっている人は「扶養控除の適用ができるのに、そのデータが申告されていない」可能性があります。
「扶養控除等(異動)申告書の記入のためこのようなデータが必要です」とか「このようなケースでは給与天引きされてなくても、社会保険料控除が活用できるので記入しておいてくださいね」いったことが勤務先で行われ、そのことが各申告書に反映されることが望ましいですが、通常、配布された年末調整の書式の記載内容により、機械的に判断されるというのが年末調整の実態ではないでしょうか。
このように、年末調整しなかった場合、各種控除の申告が受けられなくなってしまいます。
控除を受けられないことで、自身の総所得額が多くなってしまいます。
支払う税金額も高くなります。 できるだけ支払う税金を抑えたい方は、年末調整時に各種控除の申請を行うようにしましょう。
このことより、年末調整はした方が自分のためになるので、誰にでも必要な手続きだと言えるでしょう。