
障がい者雇用を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しています。
2024年の法改正に続き、2026年にも重要な節目を迎える中、法定雇用率の引き上げだけでなく、在宅勤務の普及、採用対象の広がり、定着支援への注目など、企業・求職者の双方にとって「働き方」の考え方が変わり始めています。
一方で、
「制度が複雑で分かりにくい」
「企業は実際どこまで対応しているの?」
「これから求人は増えるの?」
と疑問を持つ人も少なくありません。
この記事では、2026年に向けて変化している障がい者雇用の最新動向を、企業側・求職者側の両方の視点から分かりやすく整理します。
■障がい者雇用は「人数確保」から「定着重視」へ
以前の障がい者雇用は、「法定雇用率を満たすこと(人数の確保)」が中心になりやすい傾向がありました。
しかし現在は、単に採用するだけではなく、以下のような“働き続けられる仕組み”まで含めて考える企業が増えています。
・長く働ける環境づくり
・適切な業務設計
・コミュニケーション支援
・合理的配慮の提供
・中長期的なキャリア形成
背景にあるのは、「採用できても短期間で離職してしまう」という共通の課題です。
早期離職は企業側にとっても、求職者側にとっても大きな負担となります。
そのため、現在は「入社後にどうサポートするか」にスポットライトが当たっています。
■2026年に向けて注目される5つの変化
① 法定雇用率が「2.7%」へ引き上げ、採用ニーズがさらに拡大
障がい者雇用率は段階的に引き上げられてきましたが、2026年7月からは「2.7%」へとさらに引き上げられます。
これに伴い、対象となる企業の範囲も「従業員数37.5人以上」へと広がります。
そのため、これまで以上に従業員数の多い企業を中心に、継続的かつ積極的な採用活動(専任担当の配置など)が進んでいます。
② 「週10時間〜」の短時間勤務など、対象や職種が拡大
以前は身体障がい者向け求人が中心でしたが、現在は精神障がい、発達障がい、知的障がいも対象とした採用が急増しています。
背景には業務のデジタル化だけでなく、「週10時間以上20時間未満」の超短時間勤務でも雇用率としてカウントできる仕組み(2024年法改正)が定着してきたことがあります。
・データ入力や事務サポート
・カスタマーサポート
・IT関連業務
など、業務を切り分けることで、個々の体調や特性に合わせた柔軟な働き方が可能になっています。
③ 在宅勤務・リモートワーク対応の「ハイブリッド化」
コロナ禍以降、障がい者雇用でも在宅勤務を取り入れる企業が増えました。
「通勤負担を減らしたい」「体調管理を優先したい」「感覚過敏のため環境を調整したい」という求職者にとって、在宅勤務は大きなメリットです。
ただし、最近は「完全在宅」による孤立やコミュニケーション不足を防ぐため、出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド型」を採用する企業が増えています。
④ 改正法による「合理的配慮の義務化」で、より具体的な対応へ
障がい者雇用において欠かせない「合理的配慮」ですが、2024年4月より民間企業でも法的義務となりました。
これに伴い、最近は“何をどう具体的に配慮するか”の実効性が強く求められています。
・定期通院に合わせたシフト調整
・チャットを中心としたコミュニケーションの可視化(テキスト化)
・業務指示書の作成(見える化)
・状況に応じた電話対応の免除
企業側も一律の対応ではなく、実際の業務に落とし込んだ個別具体的なサポートを整える必要があります。
⑤ “採用数”よりも“定着支援(リテンション)”の重視
現在、多くの企業が最重要課題として挙げているのが「定着率」です。
そのため、入社後のフォローに力を入れる企業が増えています。
・定期的な1on1面談の実施
・外部の就労移行支援機関等との連携
・社内の相談窓口やメンター制度の設置 今後は、「採用数が多い会社」よりも「長く安心して働ける会社」が、企業・求職者の双方から評価される時代になっていきます。
■求職者側がこれから意識したいポイント
✅「配慮してほしいこと」を具体的に整理しておく
最近の採用選考では、“何ができないか”だけでなく、「どんな環境なら力を発揮しやすいか」「どんな配慮があると働き続けられるか」を整理して伝えることが重要になっています。
企業側も具体的な情報がある方が、入社後のミスマッチを防ぐ体制を整えやすくなります。
✅「仕事内容」と「職場環境」の両方を見る
給与や勤務地といった条件面だけでなく、
・困ったときに相談しやすい雰囲気があるか
・業務のマニュアルや教育体制があるか
・急な体調不良時のフォロー体制があるか
など、「自分が長く働ける環境かどうか」を面接や職場見学で見極めることが大切です。
■企業側がこれから求められること
今後の障がい者雇用では、ただ求人を出して人数を満たすだけでは立ち行かなくなります。
求められるのは、「無理のない業務設計」「現場社員の障がい理解」「継続的なフォロー体制」を構築し、“働き続けられる環境”を作れるかどうかです。
特別扱いではなく、「誰もがパフォーマンスを発揮しやすい仕組み」を整える視点が、企業の成長にもつながります。
■まとめ
2026年に向けて、障がい者雇用は法的にも環境的にも大きな転換期を迎えています。
特に重要なのは、「雇用率2.7%への引き上げ」「短時間雇用の活用」「合理的配慮の義務化」「定着支援の強化」という流れです。
これからは、「雇用すること」そのものをゴールにするのではなく、“安心して働き続けられる環境をいかに作るか”が、企業・求職者双方にとって最も重要な鍵になっていくでしょう。


