
「障がい者を雇用したものの、現場になかなか馴染めない」
「人事部と配属先の上司ばかりに負担が集中し、現場の一般社員が関わりにくそうにしている」
障がい者雇用を進める中で、このような壁にぶつかる企業は少なくありません。
法定雇用率の達成に向けて採用を急いでも、現場の受け入れ体制が整っていなければ、当事者の孤立や早期離職、現場社員の疲弊に繋がってしまいます。
この「人事と現場の温度感のギャップ」を埋め、全社で温かく迎え入れる体制を作る有効な仕掛けが「障がい者雇用サポーター制度」です。
今回は、人事任せにせず一般社員を味方につけ、定着率を高めるサポーター制度の立ち上げ方と運用のコツを解説します。
◇ 障がい者雇用サポーター制度とは?
障がい者雇用サポーター制度とは、人事部や配属先の上司だけでなく、現場の一般社員(同僚層)から「サポーター(ピアサポーター)」を募り、日常的なコミュニケーションや業務のフォローを担ってもらう仕組みです。
上司や人事という「評価者」以外の身近な相談相手を作ることで、障がい当事者が小さな疑問や不安をその場で解消できるようになります。
【導入する3つのメリット】
①当事者の孤立を防ぎ、定着率が上がる
ちょっとした雑談や「これ、どうやるんですか?」といった小さな質問ができる相手がいることで、安心感が格段に高まります。
②現場社員の当事者意識(風土)が醸成される
「障がい者雇用は人事の仕事」という意識から、「自分たちのチームの仲間」という意識へ変化します。
③管理職・人事の負担が分散される
日常の軽微なフォローをサポーターが担うことで、上司は本業や評価業務、人事は制度設計や面談に集中できます。
◇ サポーター制度を成功させる4つのステップ
実際に社内でサポーター制度を立ち上げる際の手順を解説します。
ステップ1:サポーターの選定(「任せきり」にしない人選)
配属先の直属の先輩社員や、関わりの多い同僚から1〜2名を選出します。
適しているのは「面倒見が良い人」だけでなく、「話を最後まで聴ける人」「業務を標準化(整理)するのが得意な人」です。
ポイント💡 業務負荷が増えるため、絶対に無理強いはせず、本人の同意を得た上で任命しましょう。
ステップ2:事前レクチャーの実施
サポーターに選ばれた社員が「何をすればいいか分からない」「失礼なことを言ってしまうかも」と不安にならないよう、事前に30分〜1時間程度の短いレクチャーを行います。
伝えるべきこと:
・本人の障がい特性と「配慮すべき事項」(過度な開示は避け、業務に必要な範囲に留める)
・サポーターの役割(「指導員」ではなく「話を聞く相手・業務の伴走者」であること)
・SOSを受けた際のトリアージ(自分で抱え込まず、すぐに上司や人事に相談してよいこと)
ステップ3:役割の明確化と負担軽減
サポーターの業務が過重にならないよう、役割の境界線をはっきり引きましょう。
・サポーターがやること: 日常の挨拶、業務手順の再確認、雑談、軽微な悩み聞き
・サポーターがやらないこと: 評価、指導や注意、プライベートの深い悩み相談、体調不良時の判断
また、サポーターの業務時間内に「1日15分の振り返りタイム」を設けるなど、本来業務を圧迫しないスケジュール配慮も欠かせません。
ステップ4:サポーターへの評価とフォロー
サポーターを「やり損」にしないことが制度継続の鍵です。
定期的に人事や上司がサポーターと面談を行い、「何か困っていることはないか」とサポーター自身のメンタルケアを行います。
さらに、サポーターとしての貢献を MBO(目標管理)やコンピテンシー評価、社内表彰などで正当に評価する仕組みを整えましょう。
◇ まとめ|共生社会の第一歩は「味方を増やすこと」から
障がい者雇用を成功させるカギは、特別な設備投資や制度以上に「現場の心理的安全性」にあります。
一般社員をサポーターとして巻き込むことで、職場全体に「お互い様」の助け合いの風土が生まれます。
これは障がいのある社員だけでなく、子育て中の社員や介護を抱える社員など、多様な人材が活躍できる組織作り(DEI推進)にも直結します。
まずは次の採用・配属のタイミングに合わせて、現場の頼れる社員に「サポーターになってみない?」と声をかけることから始めてみてはいかがでしょうか。


